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 「二つ返事で快諾」は正しい? 

●文化庁は誤用と言っているのではない 
 最近のニュースによると、次のように、文化庁の調査で「一つ返事で快諾」「失笑=笑いも出ないくらいあきれる」と、誤用する人が多数を占めたそうです。
“一つ返事”で快諾? 「失笑」誤用6割、文化庁調査
(09/20 17:52、09/20 21:12 更新)北海道新聞
 慣用句や言葉の意味で、快く承諾する「二つ返事」を「一つ返事」と誤った人が46%に上り、こらえ切れず吹き出して笑う意味の「失笑する」を60%が「笑いも出ないくらいあきれる」と誤答したことが20日、文化庁の2011年度国語に関する世論調査で分かった。
 一方で自分の言葉に気を使う人は04年度調査より7ポイント増えて78%に上った。相手や場面に応じて敬語を使う人も01年度調査より16ポイント増の74%となり、コミュニケーションへの意識が高まった。文化庁は「言葉を意識する人は増えたが、本来の使い方を身に付けることにはつながっていない」としている。 
 私も「誤用派」なだったので、ちょっと恥ずかしい気持ちになりました(もっとも、「二つ返事」の方は、私自身そのような表現自体ほとんど使いませんから、「一つ返事」だったかなと思った程度です)。ただ、現代の感覚では、「失笑」は笑うというよりも「あきれる」という方がぴったり当てはまるような気がします。
 そこで、文化庁の発表データ(平成23年度「国語に関する世論調査」の結果の概要)の該当箇所を調べてみました。すると、「辞書等で本来の意味や言い方とされるもの」と「本来とは違う意味や言い方」との、どちらが多く使われているかを調べたものであり、「誤用か否か」という価値判断を含んだものではないことが分かりました。

●高齢者は、なぜか「一つ返事」が多数派 
 データによると、高齢者ほど「一つ返事」派が多く、20〜40代では「二つ返事」派が多数というように世代間の特徴が顕著です。中高齢者ほど「誤用」が多いという一種の逆転現象が起きています。どうしてこうなったのか疑問に感じました。 
 そこで、「二つ返事」の意味を辞書で調べてみると、実用日本語表現辞典には次のような説明がありました。
はいはい、と返事を二つ重ねること。気安く返事をすること。依頼に対してすぐさま承諾する様子は「二つ返事で引き受ける」のように表現される。
 一方、「一つ返事」の方は辞書には見当たりませんでした。「一つ返事」などという言い方はあまり耳にしませんから、よく考えてみれば、「一つ返事で快諾」というのはおかしいと気づくはずです。
 では、なぜ高齢者の多くが「一つ返事で快諾」を選んだのでしょうか。それは、「二つ返事で快諾」を「正解」とするのに抵抗があったからではないかと思われます。すなわち、「二つ返事」は「はいはい、と返事を二つ重ねること。気安く返事をすること。」というように、現代ではどちらかというとマイナスのイメージが強くなっています。ドラマやコントでは、「返事は一回」などというせりふを耳にしますよね。
 そこで、「一つ返事で快諾」と「二つ返事で快諾」と、どちらが「正解」なのか迷うことになります。択一式試験ではこのような引っ掛け問題はよく出ます。このような場合、「確実に間違っている方を切る」というのが受験のテクニックです。そこで、そのようなテクニックに長けた20〜40代は「正解」できたのに、中高齢者はそこにたどり着けなかったとも考えられます。すなわち、この設問が、「安易に承諾する」という意味ではどちらの言い方を使うかというものであれば、中高齢者も間違わなかったと思われます。
 ただ、現代の感覚では「二つ返事で快諾」という表現がしっくりこないというのも事実であり、この設問については、「どちらも使わない」というのが「正解」だったような気がします。 
2012/9/24